4月1日に2.2%の上昇を記録したものの、ビットコイン(BTC)は3月7日以降、8万9000ドルの水準を上回ることができていない。最近の価格の弱さは、米国主導の貿易戦争激化と関連付けられることが多いが、実際にはトランプ大統領による関税発表以前から、投資家心理には複数の重しがかかっていた。

市場では、2月以降にストラテジー(旧マイクロストラテジー)が計52億5000万ドル相当のビットコインを購入したことが、8万ドル台を維持している主因だという声もある。しかし、誰が買っているかを問わず、1月21日にトランプ氏が中国からの輸入品への10%関税を発表する以前から、ビットコインには上値の重さが見られていた。

ビットコインはなぜ上値が重いのか 貿易戦争以前から漂っていた失速の兆し image 0

金価格(左軸)とビットコイン価格(右軸)の推移 Source: TradingView / Cointelegraph

S&P500は2月19日に過去最高値を更新していた一方で、ビットコインはその3か月間、10万ドル超えに何度も失敗した。貿易戦争がリスク選好に影響を与えたことは事実だが、ビットコインの軟調はトランプ氏の再登板前から始まっていたと見るべきだ。

ETFの資金流入と“戦略的準備金”への期待、そしてインフレ鈍化の影響

関税以外の材料として、現物ビットコイン上場投資信託(ETF)の資金流入がある。1月21日以降の3週間で、ETFには27億5000万ドルの純資金流入があった。2月18日までには、米国がカナダとメキシコに対する関税方針を示し、EUや中国も報復措置を講じていたが、それでも機関投資家による需要は継続していた。

また、2024年7月のビットコイン・カンファレンスでトランプ氏が打ち出した「戦略的ビットコイン準備金」の構想に対する過剰な期待も、市場の失望感を強める一因となった。3月6日に実際の大統領令が発出されたが、その内容が投資家の予想に届かなかったことで、期待は反転した。

ビットコインが8万9000ドルを突破できない主因のひとつは、インフレ率が比較的落ち着いている点にある。2月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.5%増、3月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は2.2%増と、それぞれ中銀の目標に近づいている。

雇用の弱さとリスク回避ムードが重しに

2022年後半、インフレ率が5%を超えた局面では、ビットコインが通貨価値の希薄化に対するヘッジとして注目された。しかし、2025年にインフレが落ち着くのであれば、利下げは不動産や株式市場にとっては好材料となる一方で、ビットコインへの直接的な恩恵は薄れる。

ビットコインはなぜ上値が重いのか 貿易戦争以前から漂っていた失速の兆し image 1

US CPI inflation (left) vs. US 2-year Treasury yield (right). Source: TradingView

加えて、米労働市場の減速もリスク資産への需要を抑えている。2月には、米労働省が発表した求人件数が過去4年で最低水準に近づいた。また、2年物米国債の利回りは3.88%と6か月ぶりの低水準まで低下しており、安全資産志向が強まっていることが示された。

結局のところ、ビットコインの上値の重さは、米財務省による大規模な買い入れに対する期待の過剰、インフレ沈静化による利下げ期待、そしてマクロ環境全体のリスク回避傾向に起因している。貿易戦争の影響はあるものの、それ以前からすでに相場は慎重姿勢へと傾いていた。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。